母子三代

そのぬくもりはきえない

そのぬくもりはきえない

婦人之友上田真而子さんの書評の通り、あらすじは「トムは真夜中の庭で」に通じるものがあるんだけど、読んだ後には実際に登場する高島さんのおばあさんよりも、物語には出てこない主人公の亡くなったおばあちゃんの存在の方が、なんとなく浮かび上がってくる気がした。
新しい生活に飛び込んでいく高島さんが生き生きしてくるのとは別に、母とおばあちゃん、父とおばあちゃんの間にあったやりとりが残した影がだんだんと濃くなっていく感じ。

台所に立って、主人公が思い出すおばあちゃんと自分の会話、母とおばあちゃんの関係。そこを読んでいて思い出した。母親は自分の子どもにたくさん期待している、こうなって欲しい、こうならないで欲しいとたくさん期待して、たくさん口出しする。
自分の言葉が100%子どもに届くと思っている。

でも、言葉は100%は届かない。
それで腹立てちゃうんだな。

こないだ講演会でも聞いたけれども、子どもに影響するのは親のの言葉よりも親の普段の態度らしい。「学ぶ」の元々の始まりは「真似る」だしね。

だからこの物語でも、主人公は祖母の支配に対して沈黙して硬直していた母親を見ていたから、やっぱり母親の支配に対しての反応は沈黙と硬直になってしまうのだろう。

主人公の母親はこれからどうなっていくのかな、変わるのかな、変わらないかな。
よく出来る子だった兄の反抗に手を焼いて、ハルに癒されるのは母親その人なのかもね。