ずっと前にあの街のこどもだった

見ないで寝てしまおうかと思ったけど、「その街のこども」を全部見てしまった。

冬の神戸は本当に寒い。

センター試験の後、六甲の駅前でたこ焼きを食べて帰ったことがあった。
ものすごく寒い日だったな。

高校生の頃、初日の出を見に行ったり、二年参りに行ったりしたけれど、本当に寒かったな。
夜中に走っている電車の中の路線図が奈良だったりして、おもしろかったね。


主演の二人が神戸に住んでいたことがあるというのを、さっき公式サイトを見て初めて知った。

それぞれの人が持っているわだかまりは、そんなに簡単には乗り越えられない。
そういうところが、このドラマは良かったと思う。
それぞれのとりとめのなさ、頼りなさ、震災の前から持っていた家族の悩み、後々で現れるひずみ。
いいドラマでした。


簡単にはあのロウソクの明かりには近づけない、と思う。


私は東京にいて、実家でお風呂に入れるようになる3月まで神戸に帰らなかった。
親も家も友達も皆大丈夫で、知ってる人で亡くなった人はいない。
一時避難所にいたという友達がいて、おみやげに紙パンツをくれた。
父にあちこち連れて行かれて、ボランティア事務所みたいな所にも行ったけど、すぐに東京に帰るつもりだったから、「こんな所に連れてこられてもな」と思ってた。

どうしたらいいのかよく分からなかった。
東京にいてもどうしたらいいのか分からなかった。
神戸に行ったって、どうしたらいいのか分からなかった。


でも、今日考えていたらむすめたちと一緒だったら、震災を体験していない人間として近づいて行ける気がした。震災を知らないむすめたちと一緒だったら、自分もゼロの立場から震災のことを知ろうと思える。
私の知らない神戸がある、やっと、そのことを受け入れられるかな。


東京ではもう梅が咲き始めていて、だんだん日の出が早くなってきている。
北野天神や須磨浦公園の梅が咲くのはまだまだ先。
海の波が春めいてきてからだね。
ひねもすのたりのたりな海と、水平線の黄砂の帯、いかなごを炊くにおい、咲き始めるよそのお家の庭の花。
電車から見る山の木々が芽吹きでいろんな色に染まる。
そのうち行けるかな。